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2003.12.16

副作用について知っておく

医師は最初から副作用の話をしたりはしない。精神科関係の薬はよく知らない人には「怪しい」んじゃないかという印象を持たれているようで、それでなくても「あなた自身のためにはのんだほうがいいですよ」ということを納得させるのはむずかしかったりするのに、さらに患者がのんでくれる確率を減らすのは得策ではないから、しょうがない。

まあ、そこまではしかたがないとして、じつは医師もそれほど副作用については詳しくないのではないか、と思われるフシもある。精神科では鬱病は取り扱う病気のなかのひとつでしかないし、鬱病だっていろいろなタイプがあるから、特定の種類のものについて何でも知っているとは限らない。患者本人が目的をしぼって Google 検索したほうが、本人にとって有効な情報を得られることもある。

抗うつ薬は効くときは効く。(効かないときは効かない。) が、副作用について知らないがために、抗うつ薬の症状まで「鬱が悪化した」と捉えてしまったら、患者にとって不幸なことだ。

頭脳労働をしている人間にとってイミプラミン系(トフラニール、トリプタノール、その他)の薬はかなりつらい。これはちょっと古いタイプの三環系という種類の抗うつ薬であるが、「抗コリン作用」というのが副作用である。これは副作用の種類として「便秘、口渇」などはちゃんと書いてあるが、同時に「頭の働きが悪くなる」ことが書いてない。コリンは腸などだけでなく脳でも重要な情報伝達物質であり、脳でコリンがブロックされるといわゆる「頭を使う」作業の効率が落ちる。

鬱状態ではもとから脳内物質の量が減るのか作用効率(レセプター感度)が落ちるのかで、すでに頭の働きは悪くなったと感じられる状態であることが多い。そこにこの追い打ち。

個人的な体験としては、トリプタノールはどうしようもない鬱感情にはとてもよく効いたが、頭脳労働の単価払いで稼ぐ身としては「なんでこんなに作業ができないんだろう」という切実な悩みがあり、苦悶の日々を送っていた。後から「抗コリン作用は頭の働きを悪くする」のを知って、「ああ、そうだったのか」とたいへん納得がいったが、それならあらかじめ言ってくれ~、と思った。どうも医師の間で「三環系をのんでる間は一時的に頭脳労働できなくなる」という認識はないらしい。「お薬 110 番」の資料にもない。でも専門医だったら「抗コリン作用」という言葉の意味するところをちゃんと教えてくれてもいいのではないか。トリプタノールほどではないが、イミプラミンもそう。

最近は日本でもかなり SSRI がよくつかわれるようになってきたが、こっちは性的な機能のほうに変化があるかもしれないので、そういう症状が出た場合は、まず薬を疑うべき。三環系だってそういう作用はある。脳内物質のバランスを変えるということは、必然的にそういう副作用を伴ってしまうものなので、これもしかたがない。効果とのバランスで薬を選択することで対応する。

ドグマチールは体重が増加して体内ホルモンバランスがおかしくなる可能性がかなりある。これはある医師に処方されていたが、他の医師に変わったら「即刻中止」になったので、嫌う医師もいる薬なのだろう。副作用のなかでは、吐気なんかがいちばんわかりやすくて、かえって無害なのかもしれない。

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